抗ウイルス枕の誕生秘話【後編】
国産の高品質なものづくりにこだわり、全国を探しまわった岩本さんが出会ったのは、昭和36年創業の寝具メーカー「株式会社マルゼン」の2代目である善林さん。
「何十万個とまくらを作ってきているので、さすがに枕の良し悪しはわかります。枕のコンセプトでいちばん大事なのは寝姿勢なんです。寝たときに体を無理なく自然に、楽な状態で支えられているかどうか。ただ洗えるとか、フワフワな感触が良いという訳ではないんです。」
寝具を作るなかで「もっと睡眠について学びたい」と、睡眠改善インストラクターの資格を第一期生として取得。マルゼンで作る枕や寝具は、高級ホテルや介護施設、病院などにも納めており、15年前から自らの会社で介護事業も始めました。
国内で稼働している数少ない特注の機械
「わざわざ商社の方が見学に来られるんです」それほど高レベルな加工技術を持つマルゼン。
たとえば、綿花から採取され固まった状態をほぐし、シート状に整える「開綿」という工程。寝具の質感に大きく影響する作業です。
マルゼンでは現在国内で稼働しているものは稀だという、非常に細かな刃がついた機械を使用。その質の高さに驚かれることも少なくないのだとか。
競争の時代から協力の時代に。
「昔は一番になること、売上を作ってなんぼ。そう思っていたんですよ」そう語る岩本さん。昭和を生き抜き日本のモノづくり、日本ブランドを確立させてきた時代を経て、令和になって見えた景色は「競争よりも協力していかに人に喜んでもらうか」だと言います。
商品企画をする上でこだわったのは「日本製であること」。
繊維自体を一般の方に見てもらう機会はほとんどない。製品になったものしか知られない。けれど日本には素晴らしい繊維をつくる工場があり、そこで働く人がいます。そうした地域、人々にも元気になってもらいたい。
抗ウイルス加工の繊維は新しい価値であり、枕はスタートにすぎません。
仕事と生き様が重なりあうことで、新たな価値を創造する。ここから本当に良い、日本の繊維製品をお届けしていきたいと思います。